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加藤治郎歌集『しんきろう』

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加藤治郎さんの第八歌集『しんきろう』(砂子屋書房)を読む。

というか、ずっと前に読んでいたのだが、色々と立て込んでいて、ブログでの紹介が遅くなってしまった。

朝の二錠を飲むには水が冷たくてしばし薬はくるくるまわる
アスファルトから靴を引き抜くゆらゆらと炎天の首都ただひとり行く


コップの水で薬を飲んだり、炎天下の道を歩いたり、ごくありふれた日常の場面だ。一首目は、口の中で薬がくるくる回っているという切り取り方がとても面白い。二首目は、「アスファルトから靴を引き抜く」という表現が、アスファルトも溶け出すような炎天の暑さを思わせて説得力がある。

こんなさらっと詠った歌にも、細やかなレトリックが用いられているところがすごい。こういう歌を読むと、頭の中にドーパミン(のようなもの)がじゅわーっと湧いてくるのを感じる。

あるときは青空に彫るかなしみのふかかりければ手をやすめたり
のぞみから送ろうとするひとひらのメールは暗い壁にぶちあたる
さくら花吹き寄せられて生涯の終りに首都の車輛を止める
残業のざんのひびきが怖ろしい漏洩前のくぼんだまなこ


私自身、会社勤めをしながら歌を詠む者として、四首目の「残業のざんのひびきが怖ろしい」には、素直に共感。



写真は、関内の「No-Chair」という立飲み屋さんのしめさば。仕事帰りによく寄るお店で、料理がとても美味しい。19時30分まではタイムサービスで一部のドリンクが安いが、なかなかその時間にはお店に行けない。「ざんのひびき」におののく日々。


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